Nov 13, 2015

東京2020:オリンピックマーケティングの現状と課題について

CATEGORY : TOPICS

shutterstock_315921167

企業の期待と注目を集める東京オリンピック・パラリンピック:過去最高のマーケティング収益に

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、「東京2020」)のスポンサーが続々と発表されている。メインスタジアムとなる新国立競技場の建設見直しやエンブレム白紙撤回などが大きな社会問題となる一方で、スポンサーに名乗りを上げる企業が相次いでいる。招致の段階から東京2020に対する企業の興味や期待は非常に高く、今回の東京2020の組織委員会の行う協賛セールスを担当する電通によれば、「組織委員会が掲げた1500億円以上というマーケティング目標は、過去最大のマーケティング収益を確保したといわれているソチオリンピック・パラリンピックの1330億円を10%以上も上回る極めて高い目標だといえる。組織委員会が立候補時のマーケティング目標943億円を1500億円に上方修正したのは、スポンサー企業の関心の高さによる、、、(中略)招致を勝ち取った日本国内では、多くの企業から東京2020への協力希望が出ることが想定される。事実ブエノスアイレス以降、200社以上のクライアントからの問い合わせを受けている。」(出典:電通報「東京オリンピック・パラリンピックとマーケティング」坂牧 政彦;2014.06.25)としており、日本企業の協賛意欲の高さを物語っている。その結果、2015年11月の現時点で、合計21社のパートナーがスポンサー企業として発表されており、間近に迫っているリオ2016(17社)やその2年後の冬季平昌(ピョンチャン)2018(現時点では6社)などと比べても、その決定スピードと協賛企業の数において群を抜いている。また集める協賛金の額も史上最高になることが確実視されている。
本稿ではこれほどまでに注目を集め、日本企業が期待を寄せる東京2020の協賛プログラムの概要を紹介し、スポンサー企業が直面する課題について述べる。

 
 

東京2020の協賛制度:その特徴は?

既に発表されているが、あらためて東京2020の協賛制度について簡単におさらいしたい。

 

協賛金の使途:大会運営費と日本選手の強化資金に活用される
まず、協賛金の使途、ーお金を出す企業にとって最も関心のある、「協賛プログラムで集められる莫大な資金は、どのように活用されるのか?」という点ーについてである。組織委員会の公式HPによれば、「東京2020の大会運営費」と「日本代表選手の強化資金」として役立てられるとしている。注目すべきは大会運営だけでなく日本代表選手の強化にも充てられるという点である。このことは今回の協賛がJOC(日本オリンピック委員会)の持つ諸権利および日本代表選手の肖像権なども包含するものであることを物語っている。この点は事項の権利内容で詳しく述べる。

 

協賛内容:権益は呼称権、エンブレムやマスコットの使用権利など
今回の東京2020の協賛プログラムはいわゆる「ジョイントマーケティングプログラム」である。つまり、その権利内容には、東京2020の大会のスポンサーであることの呼称権や大会エンブレムやマスコットのライセンス権利だけではなく、それに加えてJOCおよびJPC(日本パラリンピック委員会)のエンブレムやスローガン(「がんばれ!ニッポン!」等)、及び日本代表選手団の映像及び写真の使用権利なども含まれる。そして契約期間は、契約締結をした時点から東京2020の開催年2020年12月末までであり、その契約期間中のオリンピック・パラリンピック3大会(2016年リオ、2018年冬季ピョンチャン、2020年東京)とユースオリンピック3大会(2016年リレハンメル冬季、2018年ブエノスアイレス、2020年冬季<開催地未定>)の6大会の日本代表を応援する権利(JOCスポンサーシップ、JPCスポンサーシップ)も含まれることになる。

 

協賛の構造:3階層のプログラム。1業種2社の「競合排除」の例外も。
東京2020のスポンサープログラムは3つの階層で構成されている。つまり最上位の「ゴールドパートナー」、それに次ぐ「オフィシャルパートナー」、さらにその下の「オフィシャルサポーター」から成る。なお、この3階層から成るスポンサーは、あくまでも国内限定のスポンサーであり、そのさらに上位にはIOCのオリンピックパートナープログラム(TOPパートナー)が存在する。このIOCのTOPスポンサーとしては12社あり、パナソニック、ブリヂストンおよびトヨタの3社が日本企業として名を連ねている。
東京2020に特徴的な事象として、通常スポンサーシップはいわゆる競合排除の原則に基づき「1業種(1カテゴリー)1社」による独占が保証されるが、東京2020の場合、みずほ銀行と三井住友銀行、JALとANA、SECOMとALSOKなど、「1業種2社」という例外が認められている。他の五輪大会ではほとんど見られないことであり、それだけ協賛意欲の高い企業が多いことの表れであるという見方もできる。

 
 

スポンサーの費用対効果はどうなっているか?

さて、これほど人気の高い東京2020のスポンサーになるためには、どれほどのお金がかかるのか?またスポンサー企業はどのような効果を期待し、費用のもとをとろうとしているか?

 

莫大な費用負担:協賛金以外にも権利活用のためにさらなる費用が必要
東京2020の協賛企業が負担する1社当たりの協賛金額は、ゴールドパートナー=150億円以上、オフィシャルパートナー=60億円、そしてオフィシャルサポーター=10~30億円であると報道されている。
ここで忘れてはいけないのは、この金額はもっぱらスポンサーになるためのいわゆる権利料にすぎないことだ。オリンピックはクリーンべニュー、クリーンスタジアムで実施される原則があるため、企業の社名やロゴの看板が会場に設置されることはなく、それがテレビ画面などを通じて映し出されることもない。そのため、いわゆるブランディング効果が期待できないため、スポンサー企業が東京2020のパートナーであることを活用するためには、自ら広報や広告・販促などを行う必要がある。つまり、権利料としての協賛金に加えて、制作費や媒体費などを別途支出しなければならないのである。結果的に、その費用たるや協賛金の数倍にもなることさえあると考えられる。

 

課題:莫大な費用負担をいかに回収するか?
東京2020ゴールドパートナーになることが決定した、ある企業の五輪担当責任者とお会いし、最も大きな課題の一つについて直接話を聞く機会を得た。曰く、「オリンピックのパートナーであることを表明する名刺を作るだけでも一苦労です。レギュレーションが複雑で厳しく、すべて組織委員会の承認を得なければならないので、手間も時間もかかりすぎる。当社を担当する広告代理店の担当者もオリンピックは初めてのことであり、専門知識や経験があるわけではないので一緒に悩んではくれるものの解決策を持っているわけではなく困っています、、、。」
日本を代表するナショナルブランドの広告宣伝部門の責任者から出た発言であるから、他のスポンサー企業も推して知るべし。莫大な投資を決定したのは良いが、それに見合ったリターンを得られるかどうかについての見通しは必ずしも立っているとは言えない状況のようである。つまりスポンサーとしての活用方法をどの企業も今後模索していかなくてはならない、という段階であると言えるのではないだろうか。

 
 

オリンピックマーケティングの専門性と経験・実績をもったエージェンシーが必要とされる

スポンサーになっても広報、広告・販促で協賛権利を活用しなければ何もならない。しかもそのためには協賛金以外にそれらの活用のための費用負担がのしかかる。スポンサー企業は、トータルで莫大なコストが発生するにもかかわらず、まだスポンサーとしての活用方法を明確には見いだせているとは言えない現状のなか、投資効果を最大化するためには、オリンピックの協賛権利活用についてのアイデアの提供ができ、加えて過去のオリンピックにおける経験と実績を兼ね備えたエージェンシーが必要ではないだろうか。つまり、ロンドン2012、リオ2016において、スポンサーのために実務を経験した中からナレッジを蓄積し、それをベースにして東京2020のスポンサーに対してナレッジを提供できるエージェンシーこそが求められているのではないだろうか。

 

モメンタムのオリンピックにおける実績
モメンタムは長年にわたってスポーツスポンサーシップのコンサルティング、アクティベーション(協賛権利活用)の分野で専門性を培ってきている。オリンピックマーケティングにおいても、1996年のアトランタ五輪においてコカコーラ社、GM、AT&Tの担当をして以来、すべての夏季・冬季のオリンピックにおいて、スポンサーの側に立ったマーケティングサポートを行ってきた経験がある。前回のロンドン2012と冬季ソチ2014において、スポンサーであるコカコーラ、UPS、ユナイテッド航空やバドワイザーなどを担当、また現在進行中のリオ2016においても日産自動車、ブラデスコ(ブラジルの金融機関)など、開催地国内スポンサーの代理店として、トーチリレーをはじめとするさまざまなアクティベーションを担当している。
我々モメンタムジャパンは、ロンドン、リオのオリンピックマーケティング担当者から実務経験に基づくナレッジを引き継ぎ、東京2020のスポンサーに対するアクティベーションサポートの体制を整えている。