Jul 07, 2016

テクノロジーへの期待、日本は最下位!その背景にあるものとは?

CATEGORY : RESEARCH AND INSIGHT

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モメンタムワールドワイドと関連会社であるチェースデザインは、ショッパーに関するグローバル調査レポート”WE KNOW MODERN SHOPPERS”を発表した。この調査は、英国・スペイン・日本・ブラジル・米国の5カ国、18歳以上の3074名を対象に、買い物におけるテクノロジーの活用について現在の利用実態や意識、将来的なニーズなどを探ったものである。そこで本稿では調査結果を元に、日本におけるショッピングテクノロジーの活用について考察する。
 
 

ショッピングテクノロジーへの期待

「テクノロジーが買い物体験をより良いものにする可能性がある」と回答したのは全体の59%、全体的には買い物におけるテクノロジー活用への期待は高まってきていると考えられる。しかし日本はこの点に関し5か国中一番低く、42% と過半数を下回っている(図1)。

図1. テクノロジー認知と期待度

図1. テクノロジー認知と期待度

 
 

日本はテクノロジー活用が遅れている!?

なぜ日本はテクノロジーへの期待が低いのだろうか。レポートではテクロノジーがあまり知られていないことが想定される理由の一つとして挙がっている。「最近目にしたショッピングテクノロジーは?」という問いに対して、「モバイルアプリ(5か国平均93%、JP85%)」「ワンタッチボタン(5か国平均71%、JP65%)」「セルフチェックアウト(5か国平均63%、JP20%)」「インタラクティブディスプレイ (5か国平均47%、JP30%)」と続くが、どの項目も日本は他国に比べて低い(図2)。

図2. 最近目にしたショッピングテクノロジー

図2. 最近目にしたショッピングテクノロジー

 
革新的なテクノロジーサービスが次々と生まれる米国などと比べて、日本では買い物だけでなく生活全般においてもテクノロジーに触れる機会が少なく、テクノロジーがあることでどのようなよいことが起こるのかイメージできていないのかもしれない。あるいは導入はされているものの、人々が求めているものを提供できておらず期待値が下がっている可能性もある。
 
 

活用メリットは時間・お金の節約

では日本人は何を求めているのか? 調査ではテクノロジーを利用することで何にメリットを感じているかについても聞いており、日本では「時間の節約」(80%) 「お金の節約(68%)」「楽に買物ができる(48%)」となっている(図 3)。また今後期待するメリットは「時間とお金の節約」が82%と圧倒的に高く、次に「自分にふさわしい商品を見つけられる(61%)」と続く(図4)。買い物客はテクノロジーに対して効率性を求めていると言えるだろう。

図3. ショッピングテクノロジー活用メリット

図3. ショッピングテクノロジー活用メリット

図4. ショッピングテクノロジーに期待すること

図4. ショッピングテクノロジーに期待すること

 
 

効率性だけを追求すればよいのか?

しかし買い物体験の向上を考えた際、果たしてテクノロジー導入で効率性の追求だけを達成できればショッパーは満足するのだろうか。先進的なショッピングテクノロジーへの関心についても日本は他国に比べて低いが(図5)、それでも半数近くが興味を持っている。世界的にはより関心の高い、アクティブディスプレイ、ワンタッチパーチェスボタン、AR、Beacon、アクティブミラーなどを活用し、包括的にショッピング体験の質を高めていく必要があるのではないか。回答者の4人中3人はショッピングテクノロジーを活用しているブランドやリテーラーでより多く買い物をしているという結果も今回明らかになったが、テクノロジーを活用することで買い物体験を向上させることはロイヤリティやブランド好感度を高めることにもつながるはずだ。実際日本人の68%はショッピングテクロノジーにエンターテイメント性も求めており、テクノロジーで買い物体験の質も向上させるべきだと回答している。

図5. 先進的なショッピングテクノロジーへの関心

図5. 先進的なショッピングテクノロジーへの関心

 
 

低期待度の根底にあるもの

さきほどテクロノジーへの期待度が日本で低い理由として、「テクノロジーが活用されていない」「人々が求めているものを提供できていない」と述べた。その背景には”日本≒デザイン後進国”という事実が隠れているのではないだろうか。「日本のデザイナーは素晴らしい」と言われていてもそれは極一部を指していて、社会全体としてはデザイン意識がとても低い。革新的だと思うブランドを成功へ導いているものはテクノロジーだと思う人も多いかもしれないが、実はそれだけでは人々が求めるような革新的なモノは生まれない。テクノロジーをどう活用するか、そこにデザインが必要とされるのだ。
 
 

コンテクストを膨らませる

ここで言うデザインとはビジュアルデザインのことだけではない。デザイン思考*の第一人者ともいえるデザインファームIDEOの創業者トム・ケリーが「『デザイン』という言葉は、もはやデザイナーだけの専門用語ではない」と言っているが、我々は買い物体験をデザインする必要があるのだ。購入前から購入後までのどのタイミングでどうテクノロジーを活用すれば人々を喜ばせられるか、という視点で一連の買い物体験をデザインする。その過程で「買い物やサンプリングをする場はそこでなければならないのか」「そもそも人は買い物に何を求めているのか」などの問いも必要に応じて投げかけながら買い物のコンテクスト(背景・文脈)を膨らませていく。それに応える形でテクノロジーを活用できれば本当に人々の望むものを生み出せるはずだ。これはUberやAmazon、Starbucksなど米国の革新的だと思われている企業も得意とするところである(下記リンク参照)。そしてその視点は、本社を米国に置きPHYSITAL (Physical+Digital)を掲げるモメンタムとショッパーベースデザインを実践するチェースデザインに期待されていることでもあろう。
 
<参考リンク>
amazon事例 ”Amazon Books
Sturbacks事例 “Starbucks Reserve Roastery & Tasting Room
 


*デザイナーの思考法をベースに新しい発想を生み出すイノベーション手法。IDEO CEOのティム・ブラウンは次のように定義している。「デザイナーの感性と手法を用いて人々と技術力を取り持つこと」あるいは「現実的な事業戦略にデザイナーの感性と手法を取り入れ、人びとのニーズに合った顧客価値と市場機会を創出すること」